阿佐ヶ谷の家

わがYamyam町と隣接する阿佐ヶ谷の一軒の家が、いまBlogで話題に
なっている。

宮崎 駿氏のトトロの住む家という写真画集でも取り上げられて
いる家だそうだ。
daikatotiさんは、阿佐ヶ谷には、いらしたことはないが、あこがれの家として
イメージをふくらませ、きれいな水彩画で表現しておられる。
阿佐ヶ谷の家_c0128628_18401525.jpg

わたしは、最近ドイツから帰ってきたばかりだが、子供のころからこの界隈に
住んでいるものだから、この家のことはよく知っている。
現在も、この家の前を通って、あるところに定期的に通っている。

昭和の初期に建てられた洋館で、低い垣根にいつもバラの蔓がからんでいた。
赤い屋根、白いペンキの窓枠に白いレースのカーテン、お庭には、バラや小花が
咲きこぼれ、中からピアノの練習曲なんかがポロポロと響いていた。

“結婚したら、こんなお家に住むんだ”と子ども心に思っていた。

現在、この家は売却され、近々取り壊されるという。そのあとには、横文字の、
ちょっと見には、洒落たアパート、もとい、マンションが建つのであろう。
なにしろ、Yamyam町の辺りにも、一戸建ての家は少ないし、まして、
平屋の家は皆無である。

若きジャズピアニスト、komamanさんは、近藤邸を守れ という記事を書いている。

アニメ作家の大地さんは、昔、阿佐ヶ谷に住んでいたころ、散歩道で出会った
この家の印象を
「オレンジの屋根の家」と題して書いている。

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お若い方々がこんなレトロの家に、住みたいとか、あこがれるとかおっしゃるのを
聞くと、世の中、捨てたものではないなあ、と少し安堵する。しかし、近代的な住まい
と違って、手入れは大変だろうなあとも考える。今どき、竹のまがきをシュロの縄で
仕上げる職人さんがこの近くで見つかるのかしら。
アルミサッシュではない木の窓枠には、定期的なペンキの塗り替えが必要だろうし
なあ。鬱蒼と茂った大木の剪定も素人には負えないだろうなあ・・・。

西洋では、100年以上も古い家を、若いカップルが買って、自分たちの手で、補修
したり、改装したりして、年がら年じゅう工事中のような家に住んでいる姿をよく
目にする。

若いうちは体力があるんだから、ペンキ塗りでも、壁紙貼りでもなんでもやって
しまうわね。

少しずつ手を入れて自分の暮らしにふさわしい住まいを作るのは、じつは、
とっても高尚で、楽しい趣味だけれども、日本では、build and scrap(壊しちゃ、
建て、建てちゃ、壊し・・・)で、家の寿命が短い。

この家でも、おそらく築5、60年ぐらいではないか。
やっぱり、古い家を維持していくには、大変な意志力と、体力、そして、財力も
必要だろうなあと考える。

近藤家は、昭和の、庶民の良質な暮らしぶりを、垣根ごしに示し続けてこられた
ように思う。長い間、ありがとうございました。
by tamayam2 | 2007-09-02 18:52 | 日々のできごと
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