【563】禅寺の収入源

下の写真の手前の丸い穴をごらんになってください。
漬物を漬ける甕のようにも見えますが、漬物小屋ではありません。
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先日、訪問した京都・東福寺の東司という建物なのですが、
禅宗の寺で東司(とうす)と言えば、お手洗いのことだそうです。
室町時代の重要文化財です。
用便をするに際しては、いろいろ作法があり、禅僧には修行の一つだったそうです。

私がとても興味をもったことは、この甕に溜まった下肥(しもごえ)を捨てることはせず、
農家に売り、それが寺の重要な収入源になったという点です。
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京野菜として有名な京菜、真っ赤な京ニンジン、聖護院ダイコン、千枚漬けのかぶら、
万願寺とうがらし・・・そういう野菜は、昔は、下肥を使って育てられたのですね。

閑話休題:もう20年ほど前のことですが、韓国人の若い女性から、
「とても聞きにくいことなのですが、ある種の薬を買いたいのですが・・・・
何と言って買えばよいか・・・?」と、相談を持ちかけられたことがあります。
その方の日本語が未熟なせいでどんな薬かよく理解できないので、いろいろと
質問しましたら、それは便秘薬でも、下剤でも、避妊薬でもなくて、虫下しだったのです。

彼女が言うには、韓国では、お母さんが、いつも虫下しを用意しておいてくれて、
生野菜を食べた後には、用心のために虫下しを常用しているということです。
韓国では、まだ下肥を使っていますから・・・と彼女は恥ずかしそうに言っていました。
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ドイツでも新鮮な生豚肉のミンチをパンに挟んで食べるMettwurstという食べ方が
あるのですが、「・・・うむむ、生の豚肉は、ちょっと・・・」と尻込みする私に、
「なぁに、虫下しを飲んでおけば大丈夫ですよ・・・」としきりに勧めてくれた
友人がおりましたっけ。

今、日本の薬局で虫下しが簡単に手に入るかどうかわかりませんが・・・日本では
スーパーで買ってきた野菜を食べている限り、回虫に苦しむということは無さそうです。
若い世代では、虫下し、回虫などという用語も理解不可能でしょうね。
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東福寺で下肥を業者に売って、それが寺の大事な収入源になったということを
知り、広い世界には、まだ下肥を使っている国、虫下しや検便が必要な国が存在する
のだなぁ~と、当たり前のことですが、思い至ったのです。

それと、日本で水に流してしまっている下肥はもしかしたら、すごい資源なのではないか、
という疑問。

海外に行って、生野菜のサラダや生牡蠣、刺身を出されても、調理人の腕をあまり過信なさらない
ほうがよいかと・・・老婆心までに。

by tamayam2 | 2012-12-10 14:43 | 日々のできごと
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