下の写真の手前の丸い穴をごらんになってください。
漬物を漬ける甕のようにも見えますが、漬物小屋ではありません。 先日、訪問した京都・東福寺の東司という建物なのですが、 禅宗の寺で東司(とうす)と言えば、お手洗いのことだそうです。 室町時代の重要文化財です。 用便をするに際しては、いろいろ作法があり、禅僧には修行の一つだったそうです。 私がとても興味をもったことは、この甕に溜まった下肥(しもごえ)を捨てることはせず、 農家に売り、それが寺の重要な収入源になったという点です。 京野菜として有名な京菜、真っ赤な京ニンジン、聖護院ダイコン、千枚漬けのかぶら、 万願寺とうがらし・・・そういう野菜は、昔は、下肥を使って育てられたのですね。 閑話休題:もう20年ほど前のことですが、韓国人の若い女性から、 「とても聞きにくいことなのですが、ある種の薬を買いたいのですが・・・・ 何と言って買えばよいか・・・?」と、相談を持ちかけられたことがあります。 その方の日本語が未熟なせいでどんな薬かよく理解できないので、いろいろと 質問しましたら、それは便秘薬でも、下剤でも、避妊薬でもなくて、虫下しだったのです。 彼女が言うには、韓国では、お母さんが、いつも虫下しを用意しておいてくれて、 生野菜を食べた後には、用心のために虫下しを常用しているということです。 韓国では、まだ下肥を使っていますから・・・と彼女は恥ずかしそうに言っていました。 ドイツでも新鮮な生豚肉のミンチをパンに挟んで食べるMettwurstという食べ方が あるのですが、「・・・うむむ、生の豚肉は、ちょっと・・・」と尻込みする私に、 「なぁに、虫下しを飲んでおけば大丈夫ですよ・・・」としきりに勧めてくれた 友人がおりましたっけ。 今、日本の薬局で虫下しが簡単に手に入るかどうかわかりませんが・・・日本では スーパーで買ってきた野菜を食べている限り、回虫に苦しむということは無さそうです。 若い世代では、虫下し、回虫などという用語も理解不可能でしょうね。 東福寺で下肥を業者に売って、それが寺の大事な収入源になったということを 知り、広い世界には、まだ下肥を使っている国、虫下しや検便が必要な国が存在する のだなぁ~と、当たり前のことですが、思い至ったのです。 それと、日本で水に流してしまっている下肥はもしかしたら、すごい資源なのではないか、 という疑問。 海外に行って、生野菜のサラダや生牡蠣、刺身を出されても、調理人の腕をあまり過信なさらない ほうがよいかと・・・老婆心までに。
by tamayam2
| 2012-12-10 14:43
| 日々のできごと
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