ハリス・ツィード

イギリスのスコットランド地方にハリス島という島が
あって、そこで織られるホームスパンのウールを
ハリス・ツィードという。ザラザラ、チクチクとした素朴な織物
なのだが、何年も着古すと、何ともしっくり肌になじんで、
着心地がよくなるらしいのだ。英国王室から特別な商標を
頂いて保護されている。


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私の亡父は1953年、
今のエリザベス女王
の戴冠式に渡英し、
そのまましばらく
ロンドンに住んでいた。
当時、ロンドンで
購入したハリス・
ツィードのジャケットを
帰国後も愛用していて、
亡くなるまで20年以上も
着続けていた。

袖口は擦り切れ、肘も薄くなり肘宛てを当てて補修しながらも、いつもこの
ジャケットを羽織って犬の散歩に出かけていた。
今のように、フリースだとか、羽毛の軽いジャケットのない
ころである。
(最近では、重いウールのオーヴァーを着る人が少数派になった。)
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いつのころからか、家には、ハリス・ツィードのジャケットが
2着あって、紳士物なのだが、私も着たいと思うようになった。
一つは、ちょっと肩のところを婦人物に直せば、着られそうなの
で、どこかで紳士物の古いジャケットを修理してくれるところが
ないか・・・と探していた。
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急ぐ用でもないので、しばらくハンガーに掛けたまま、放置
されていた。外出の度に、たしかこの辺に古いタイプの
テーラーがあったはず、と思いつつ歩いた。が、Yamyam町近辺
には、もうそういうオーダー服を扱う店は皆無なのだった。
(テーラーばかりでなく、豆腐屋、魚屋すら姿を消しつつある。)
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駅前の商店街には、AOKIという既成の紳士服を売る量販店が
でき、ビジネス・スーツは、既製服で十分間に合う時代に
なったのだ。
(だれが、古い上着を修理してまで着るか!?)

昨日、池袋の住宅街を歩いていたら、小さい構えの店ながら、
「紳士服、婦人服のオーダー、修理承ります・・・」という看板
を見つけた。おそる、おそるベルを押して、事情を話すと、
「ハリス・ツィードなら何年でも着られますとも、もったいない。
是非お持ちなさい」と年配の主人が言ってくれた。

古いものをさっさと捨てるのは簡単だし、断捨離(だんしゃり)
が潔しとされる今の風潮には、古いものに恋々としているのは
恥ずかしいことであるのだろう。しかし、古いものを大事に
するこういう職人気質の人に出会えて、昨日は、本当に
胸がすく思いがしてうれしかった。
(註:断捨離とは、断る、捨てる、離れるの意味
  老年になったら心がけることと言われている。)

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写真は、昨年12月に出かけた伊豆高原シャボテン園で。
くちばしが大きい鳥は、シロムネオオハシ
シロムネオオハシ【白胸大嘴 キツツキ目オオハシ科
         Ramphastidae Vigors 英 toucans】
中南米産

鶴のような鳥は、ホオジロカンムリヅル
ホオジロカンムリヅル【頬白冠鶴 ツル科 Balearica regulorum】
アフリカ産 ウガンダの国鳥。

シャボテン園では、いくつかの鳥が一定区域に放し飼いに
されており、観客は通路から眺めることができるのがいい。
シャボテン類もどれもよく手入れされていて、その豊かな
生命力を存分に味わうことができる。
by tamayam2 | 2012-01-20 18:46 | 日々のできごと
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