ドイツの窓枠と鍵のはなし ふたたび

ドイツから日本に持って帰りたいものは、じつは、
窓枠なんて言うと、人は、信じられないでしょう。

先回、窓の写真でご紹介した三種類に開閉する窓について
もう少し説明させてください。
c0128628_23112698.jpg

三種に開く窓というのは、住んだことの無い方には
想像しにくいものですが・・・
どんな安物のホテルでも、貧しいアパートでも、古びた家屋にでも、
一般仕様の設備として備わっているものです。

どのぐらい昔からあるのか知りませんが・・・・。

犬養道子さん『ラインの河辺』中公文庫(1976年)によれば、
第二次大戦中にもこういう窓は、あったということです。

初めてドイツのホテルに泊まったとき、窓を開けて、空気の
入れ替えがしたいと思い、重い取っ手を動かしていたら、
ふっとした弾みで、右の窓枠が支点となり、ガラス窓を大きく
全開することができたのです。
あらら、うれしや!

ところが、次にどうやって、閉めればよいかがわからない・・・むむむ。
ホテルの窓を壊しちゃ、日本人の恥と思い、慎重にあれこれ
操作しました。
半時間あまりの試行錯誤の末、次のような原則がわかったのです。

ノブは、時計まわり。
12時ピッタリの位置でノブを垂直に立てると、完全にしまる。
3時の時点で、ノブを水平にすると、左右いずれか窓枠を支点として
全開する。
(観音開きの右窓でしたら、右のほうへ開く。 
 あとから実感したことですが、ドイツ人が大好きな窓磨きも
 この装置のおかげで、内外、両面きれいに磨くことが可能になります。)

6時のピッタリの時点で、ノブを垂直に下げると、底辺を支点として、
窓の上部が室内側に15°ほど傾く。底辺は固定されたまま、上部枠だけが
枠から離れ、その隙間から風が通る。
(ベランダに通じるガラス製ドアも同じ原理が適応されます。
 この装置を、日本で見たことがありません。)

そういう装置がすべて、窓枠と、窓枠を支える壁枠内部に
仕組まれているのです。ある地点で、両者がぴったり呼応すると、
ガチャリと施錠されます。おそらく、窓枠師とか錠前屋などの
専門的な技術が関与しているのでしょう。プロのわざです。


c0128628_23141010.jpg
鍵の話を
しましょう。
ドイツの鍵は、
だいたいにおいて、
時計まわりに
2回まわすのです。





















しかし、ある鍵は、1回半、ある鍵は、2回まわしたあとで、半回逆まわし
などという変則的なものもあります。
そういう鍵を2、3組み合わせますので、手順を覚えるまでが大変です。

私の住んでいたわりに高級アパートでは、
道から、床がタイル張りの玄関ホールに入るのに、1本、
そのホールから、じゅうたん敷き内玄関に入るのに1本、
内部階段を上り、私の部屋のドアを開けるために3本、
都合5本の鍵を操作しないと自室に入ることができない仕組み
になっていました。(嗚呼)

はじめは、めんどうだから、自室に入る鍵の1本だけを施錠する
ことにしたら、大家からたちまち文句を言われてしまいました。

補修業者や、通いのお手伝いも入ってくるので、原則どおり3本きちんと
施錠しないと、他の人が迷惑すると言うのです。たしかに、原則を破ると、
後から来た人は、どの時点からやり直しをしなければならないのか、
手順がわからなくなります。

「12時を2回通過して逆まわり、9時で止める・・・」などとブツブツつぶやき
ながら、自室に入るため、3つの鍵穴と格闘したものです。
きゃしゃな真鍮の鍵でしたが、ドイツ暮らしの第一日目には、
「ア~ア、とんでもない国に来ちゃった!」
とため息が出ました。
c0128628_2316348.jpg

閑話休題
ヨーロッパでよく見る植物、ミルトス。(上の3枚の写真)
この植物は色々な異名があり、
ミルテ、マートル、ペルシャ語では、ステラ(Stella)、英語ではスター(Star)。
意味は、夜空に輝く星です。
聖書にも幾度も登場し、ユダヤ人にとって儀式に欠かせない
芳香の樹木だそうです。結婚式にも使われることから、一名、
祝いの木とも呼ばれます。 
日本語名は、ギンバイカ(銀梅花)
あまり見たことがありませんが、新宿御苑にあるということです。

8月22日 Wuerzburug大学植物園で撮影。

ミルトス【銀梅花 フトモモ科 Myrtus communis 地中海原産】

旧約聖書のあちこちに登場します。
 「・・・山と丘はあなたたちを迎え、
  歓声をあげて喜び歌い、
  野の木々も、手をたたく。
  茨に代わって糸杉が、
  おどろに代わって ミルトス が生える。
  これは、主の記念となり、しるしとなる・・・・」
       旧約聖書 イザヤ書55:12~13
                          
 
同じくフトモモ科に、
フェイジョア【フトモモ科 Feijoa sellowiana】があります。
c0128628_2319296.jpg

こちらは、Yamyam町内の医院の庭で 6月に撮影。
[PR]
by tamayam2 | 2010-09-13 23:25 | たび | Comments(18)
Commented by school-t3 at 2010-09-13 23:32
こんばんは。
はじめまして^^

ミルトスと窓枠の情報ありがとうございました。
眼から鱗です。
Commented by aamui at 2010-09-14 00:17
凄い窓ですね 9種の鍵にも驚きました ドイツらしさなのでしょうか tamayamさんの頭もドイツ仕様なのですね=^.^=
この窓は日本にも普及したらうれしいですね 
Commented by tamayam2 at 2010-09-14 00:44
◆school-t3 さん、
初めまして。私もリンクをさせていただきました。
ミルトスという花には、数年前から興味があり、あちこち
で見るたびに撮影はしていたのですが、よく正体がつかめ
ませんでした。「新聖書植物図鑑」(教文館版)にも
出ております。この度、ドイツ南部の植物園で確認
できてうれしく思っています。今後ともどうぞよろしく。
Commented by tamayam2 at 2010-09-14 00:49
◆ aamui さん、
そう、誠にすごい窓です。マンションなんかで、窓をちょっと開けておきたいけど、防犯上心配なことってあるでしょう。このドイツ式ドア、Or窓枠ならセキュリティー上
も安心なんです。ドイツにはクーラーなどありません
でしたが、結構暑い日もあるのです。ちょっと風を
通したいたいとき、この窓枠の装置には、感動しました。
ぜひ日本の建築会社が開発してほしいと思っております
が、やっぱりパテントととか、あるんでしょうかね。
Commented by echalotes at 2010-09-14 03:05
tamayamさん、お久しぶりです。
いいご旅行ができたようでよかったですね♪
フランスにも、こういう窓があるけれど、ドイツほどはたくさんないかな。友人宅の窓がこの窓で、私はなかなかうまく開けられませんでした~。
ドイツ人もたくさん鍵を持ってるんですね。フランス人も同じです。「鍵」という単語を習うのに、〝必ず複数で使う〟と教えてもらいましたが、現地に来て、そのわけがよーくわかりました。
小さな花火のような花、かわいいですね。フトモモ科という名前がなんだかおかしい♪
Commented by ayumi-favola at 2010-09-15 03:49
そういえば家の小さな窓はこの方式です。
私もなれるまでにちょっと時間がかかりました。
ホテルなどでも日本人の方といっしょだ「閉められないー」とよく助けを求められます。
Commented by 寧夢 at 2010-09-15 06:04 x
ああ、鍵の話も犬養さんの本で覚えたような気がします。
私は住んだわけではなかったので、苦労はしませんでした。
スティ先では鍵を持つことはありませんでしたし。

星の意味を持つ花の話で、河合隼雄先生の話も思い出しました。
定位置にあるということと星がそこに在るということの大切さ。
場を維持するということ。

フェイジョア、確か果物では。こんな花だったのですね。
フトモモ科・・・思わず笑ってしまいました。
Commented by kimiko_shibata1 at 2010-09-15 08:36
おはようございます。
ドイツの窓枠と鍵のお話、興味深く拝読いたしました。
窓枠は私もほしいです!家の中の風の通りをよくしたいですもの。
お掃除も楽とは!さすがドイツ!

さて複雑な鍵は・・・????
今となっては覚えきれないのでは?と不安がよぎります。でも安心ですね。

Commented by tamayam2 at 2010-09-18 11:08
◆ echalotes さん、
お久しぶり!東京にもやっと秋風が立ち始めました。
ホッとしています。鍵と言う言葉は必ず複数形で
使う・・・なるほど。(西洋の生活様式を考えると、
深くうなずけますね。)フトモモ科は、太腿ではない
のよ。でもおかしいわね。(*^v^*)♪
Commented by tamayam2 at 2010-09-18 11:11
◆ ayumi-favola さん、
イタリアでもあるのね。私、閉所恐怖症なのか、いつも
風の流通がないと不安になる性質があって、ホテルの
窓が開かないと、がっかりです。このごろは、そういう
窓が多いです。電気仕掛けで空調を調節するのが
苦手で・・・窓からのそよ風が一番!
Commented by tamayam2 at 2010-09-18 11:24
◆寧夢さん、
先日、Bellaさんと小石川植物園の散策をご一緒
しました。寧夢さんがBellaさんをご紹介くださった
のでした。よい出会いになりました。感謝しています。
同じ学校のご出身なんですって?!寧夢さんの読書量、
文章力、感性の豊かさ・・・について二人で話しましたよ。
犬養道子さんは、私が若き日に影響を受けた人です。
かなり御年と思いますがまだフランスにおられるの
でしょうかね。河合先生も素晴らしい方でしたね。
どのご本に書かれている言葉でしょうか。いい言葉
ですね。「場を維持すること」・・・!
Commented by tamayam2 at 2010-09-18 11:32
◆ kimiko_shibata1 さん、
ほんと、今となっては、覚えきれませんね(笑)
自宅の鍵だけではなく、仕事場の鍵もややこしくて、
セキューリティの暗号などをセットして施錠していま
したので、ドイツ人の徹底さぶりにあきれたり、感心
したり・・・。 shibata1さんのBlogでよく出てくる
北関東について不案内なので、先日車であちこち
出かけておりました。群馬県桐生市、安行市など。
やっと秋風が立ち始めたようです。ネコも食欲が
出てきてホッとしております。
Commented by kawazukiyoshi at 2010-09-18 14:35
窓枠の話は、とっても、興味をそそられました。
ドイツに住んだことがなかったので
楽しかった。
ドイツでも通じるかなーーー。
今日もスマイル
Commented by kanmyougama at 2010-09-18 16:57
窓枠も面白いと感心しましたが、
鍵の仕組みが複雑なのにはびっくりです。
自室に入るにも大変、お酒の入った後などどうしよう、
扉の前に寝込んでしまいそう。

手でねじを回す仕組みの時計に閉口しましたが
当たり前のことなのでしょうね。
Commented by tamayam2 at 2010-09-19 06:06
◆ kawazukiyoshi さん、
いつも心洗われるような詩を、ありがとうございます。
今日もスマイル・・・を忘れないようにします。
さて、ドイツ人は、どちらかというとニコニコしない
ほうですね。New Zealand人はニコニコ
するほう。知らない人と目が会ってニコッとするのは
いいですね。日本だったら、ちょっと変に思われる
かも。韓国語でニコニコするのを、シングルポングル
と習ったことがあります。面白い響きです。今日も
シングルポングル!
Commented by tamayam2 at 2010-09-19 06:11
◆ kanmyougama さん、
>お酒の入った後など・・・本当に往生しました。
階下に日本人が住んでいたのですが、ある晩、その人
がドアの前で汗かいて鍵と苦闘していました。
酔っていて上手く開けられないのです。他人事では
ないと思いました。手伝ってあげてなんとか入ること
ができましたが・・・。トイレに駆け込みたいとき、
忘れ物をして引き返したとき、いつもヤレヤレ・・・と
ぼやき節が出ました。こんなドアは日本には持ち帰り
たくないです(汗)
Commented by rin at 2012-07-08 04:15 x
ありがとうございます!!!
今ドイツのホテルにいるのですが、
私もちょうどさっき30分ほどベランダの窓の取手と格闘した末、ネットで検索してこの記事に助けられました!
まだ学生だし1人で来てるし英語圏の国へ行く途中に立ち寄っただけなので独語話せないからフロントにも質問できないしで焦ってたんですw
本当にありがとうございます!!

ちなみにホテルの部屋のドアや備え付けのプッシュ式石鹸とも格闘しました…
ドイツの物は、機能的すぎてわかりづらいです…
Commented by tamayam2 at 2012-07-08 21:57
♪ rinさん、
まあ、まあ、ひょんなことからこの記事を見て、助けられた!?!
よかったです。地球の歩き方にも、窓の開閉問題は取り上げられて
おりませんね。実は、とても必要なことなのにぃ!
アメリカの習慣はよく報道されているようですが、ヨーロッパの
諸習慣は、ちょっととっつきがわるいところもありますね。
これから英国に行かれるのでしょうか。ドイツは、じつはあまり英語
が通じない国です。この記事がお役に立ててよかったです。
よい旅をお続けください。Alles gut! よいご旅行を!
<< コノハチョウ 戸口と窓辺について >>