映画『阿弥陀堂だより』のロケ地

ドイツにいたころ、訪問者が、読み古しですが、よろしければと、
置いていってくださった文庫本に、南木 佳士(なぎ けいし)と
いう方の小説があった。

私は筆者が信州のお医者さんで、芥川賞を受賞者ということも
知らず、読み進んでいくにつれて、信州の田舎の情景描写や
登場人物の気持ちの動きに、日本人らしい繊細な思いが感じられて、
すっかりこの作家の文章にひきこまれてしまった。

南木さんの書かれたものなら、何でも読みたいと思って探したが、
何しろ筆者は、うつ病なので、そう多作ではないのだ。

お医者さんでもうつ病になるのだなあ、驚いたり納得したりした
ものだ。
生死に関わる患者さんを数多く看ておられると、出版社や読者の
要求に応じて器用に新作を次々にとは行かないのだろう。

先週、信州の友人に誘われて7年に一度の善光寺御開帳のお朝事
いうものを経験した。その帰り、松本市を北上して飯山市の
阿弥陀堂付近を散策した。そこが、 映画『阿弥陀堂だより』(2002年)
のロケ地ということであった。
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車で行けるところまで農道を通り、後は阿弥陀堂まで徒歩でいく。
その辺りは、アスパラガスの栽培農地で、お地蔵様が立っている。
遠くには棚田も見える。堂に上がると、中に阿弥陀仏が鎮座まし
まし、映画のスチール写真がおかれていた。
縁側に腰を下ろして外を眺めれば、千曲川の流れが菜の花畑の向こう
にかすんで見えた。
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阿弥陀堂付近の農道では、イチリン草(写真上)、オドリコ草、
クルマバ草、チゴユリ、クサノオウ、ケマン草、マムシ草など
咲いていてこころが踊った。

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堂の裏手ではウワズミ桜が穂状の花を揺らし満開であった。
なんという平安な空間!
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これは、道端で見たウスバシロチョウ(アゲハチョウ科)。
ちょっと人面みたいね。食草は、紫ケマン草とか、うべなるかな。

帰りにビデオ屋さんに立ち寄り、映画『阿弥陀堂だより』の
DVDを借り、仮寓で見た。

アカデミー賞を受賞した『おくりびと』では、都会での夢に
やぶれた青年が東北地方の郷里に戻ってきて自分を取り戻す
ストーリーだった。その映画のように帰るべき故郷を持っている
人はそう多くない。この『阿弥陀堂だより』でも、仕事の重圧に
バーンアウトした(燃え尽きた)女医の話が中心になっている。

同じ日に実際に見てきた光景が映画の中で再現されるのを
不思議な面持ちで観た。
寺尾 聡、樋口 可南子、北林 谷栄らが好演している。

自然に任せてのんびりと暮す生き方は、今ではだれもが簡単に
手に出来るものではないが、どんな薬にもまさる治療薬である
ことは間違いないだろう。
by tamayam2 | 2009-05-20 19:04 | たび
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